じゃない!IDMダンス~同調圧力~

IDMとはIt Doesn’t Matter の略称だ。日本語にすれば「どうでもいいじゃない!」「気にしない!」と言うことになる。都内の某社、C社と言う、が行なっているIDMビジネスがなかなか興味深いのだ。

音楽が流れる。その曲に合わせてミーアキャットがダンスをする。ミーアキャットはマングース科の南アフリカ周辺にいる動物だ。ダンスと言っても、単調なあまり抑揚のないダンスだ。曲のリズムには合わせているのだが、曲のイメージと合っているのか、外れているのかよくわからない。

悲しい感じの曲が流れているときのダンスも活発な曲が流れているときのダンスも同じ調子で踊っている。とはいえいつまでも同じでなく、曲調が変わってもいないのに急にダンスが変わることもある。なんだこれ?

 

【同調性の排除】

ミーアキャットがダンス?このミーアキャットはもちろん本物ではない。スマホの中のアプリのミーアキャットである。スマホで音楽が流れ始めると、その音楽に合わせてミーアキャットがダンスを始める。曲の意図にも曲調にも関係なく、リズム(あるいはテンポ)だけに反応しているダンスなのだ。

スマホで音楽を聴いていると画面にミーアキャットが現れる。リズムに合わせて踊り始める。音楽に集中したいのだが、つい、ミーアキャットを見てしまう。リズムに合ってはいるのだがどことなく「ちょっと違うだろ」という感覚が生まれてくる。

悲しいイメージの曲でも、リズムに合わせてダンスするし、激しい行進曲でもリズムが同じなら、悲しい曲と同じようにダンスをするのだ。「違うだろ」と思ってしまう。

「違うだろう」と思う理由は心理学でいう同調圧力だ。同調圧力とは、例えば複数の人とのコミュニケーションを取るときに、皆で意見や考え方を同調させることだ。圧力と言うと威圧的にも聞こえるが、必ずしもそうではない。

私たちは、この同調圧力の中でコミュニケーションを行っている。相手の言うことに対して合わせる、すなわち同調する。自分の言うことに、相手が同調してくれる。これでコミュニケーションが成り立つ。同調コミュニケーションは人間としてのベースにあると考えていいのではないだろうか。

同調性に応じない相手を認められない、ひどい場合には攻撃的になることがある。特に、現状、私たちの多くが対応を余儀なくされているオンラインでのコミュニケーションではこの傾向が見受けられる。

 

【どうでもいいじゃないか】

オンラインのコミュニケーションでは、対面に比して特に同調性を気にしがちだ。オンラインでは回数に限りがある会議やミーティングで結論を求めたくなってしまう。対面であれば、コミュニケーションの機会は多く、同調できなくてもそれほど気にならない。それがオンラインだと同調なのか否かが気になって仕方がないのだ。

そこでミーアキャットの登場だ。ミーアキャットはまったく同調することなんて考えない。自分のやりたいようにダンスをする。その姿を見て人間は思い返す。そもそも、人間は好きなようにやればいい、相手が認めてくれるかどうかは関係ない。同調にこだわる必要はないのだ。

オンラインの新常態では過度に同調圧力がかかっている。オンラインのコミュニケーションではその傾向が顕著なのだ。ミーアキャットに学びたい。なお、C社ではこのアプリでの体験者の心理変化を調査中だ。効果が確認できれば2021年には発売されるとのことだ。