ガーデニング

「うまく育てたいのですか?3つの基礎は果たしてますか?」

「水やりも、肥料も、日当たりもできているはずなのですが・・・でも枯れてしまうのです」

「もう一度、復習しましょう。3つの基礎について、私に説明してください」

「はい。しっかりと水をやる。肥料も与える。それから太陽にあてて日当たりを良くする。3つともやっているのですが・・・」

「水をやり過ぎてませんか?肥料は必要な時期を考慮してますか?太陽光はあてるべき時間帯もありますよ。直射日光が苦手な場合もありますよ」

 

【ガーデニング?】

さて、ここまでの会話はガーデニングのプロと育て方を学んでいる素人に思えるだろう。実はこれは企業の課長クラス向けのセミナーの一部なのだ。

セミナーの主催者のT氏はコンサルタントとして企業における人材育成を行っている。今回は課長職となって1年ほど経つ従業員向けのセミナーだ。参加者は課長と言う責任を負うようになり、部下に対して指導をしていかねばならない。その指導方法の適切性を、1年経過後に確認するのだ。

確認のために必要な素材が「水やり」「肥料」「日当たり」の3つの基礎なのだ。再度、言う。これはガーデニングではない。企業の課長向けだ。

課長の人材育成のための1つ目のポイントは「水やり」すなわち指導である。部下に対して適切な指導あるいは指示を出すことにより部下は動き始める。企業は個人が単独で動くだけでは成長に陰りが見える。課長が指導することで多くの部下が動き始め、企業は大きく育つ。

2つめのポイントは「肥料」である。肥料は栄養素だ。教育だと考えればいい。指示・指導にも教育的要素は含まれるが、実施する目標が決まっている場合は指示・指導ですむのだが、目標が単純ではなく、新たな学びが必要な時がある。教育である。

課長が部下を自ら教育するだけではなく外部講師を招く、他社から学ぶ、海外から学ぶといった指示・指導では得ることができない教育を課長が行なうことで、部下は栄養素を得ることができる。

3つ目の「日当たり」は気分転換だ。同じ部署で固定化していないか、1人きりで頑張り過ぎていないか、時間の猶予や休息は与えられているか。これが日当たりだ。緊張状態を適時、緩和することとも言える。

コンサルタントはこの3つの基礎であるポイントを、ガーデニングになぞらえて話している。

 

【やり過ぎは禁物】

T氏はそもそもガーデニングのプロだった。イギリスでガーデニングを学ぶ大学に入ったのだ。その後、ガーデニングのプロとして活動後にフランスのビジネススクールで学び、今はガーデニング技術を応用して企業向けのコンサルティングを行っている。

T氏は言う。「重要なのは3つの基礎の“分量”です。水やり、肥料、日当たりを行っても枯れてしまいます。ほとんどの場合、多すぎるのです。水やり、肥料を与えすぎて太陽光に接しすぎなのです。企業でも同じです。課長として部下のために頑張ることはすばらしいですが指示・指導、教育、気分転換が適時・的確ですか?やりすぎではないですか」

私たちはつい水を与えすぎて呼吸できなくしてしまう、肥料を与えすぎて消化不良にしてしまう、そして気分転換と称して飲み会なんて行ってしまう。植物のためと思い、植物をダメにしてしまうのだ。

植物にも自らの育ちの猶予があるがごとくに、部下にも育ちの猶予があることを学ばねばならない。