それは過保護なのか残酷なのか

会社勤務ではよくあることだ。特に営業部に勤務していたらよくあることだろう。例えば、クライアントから文句を言われた場合を想定しよう。クライアントは「どうしてくれる。すごい損失だぞ!」と怒り心頭だ。この時、あなたが営業部の担当者だった場合を想定して欲しい。あなたは上司に相談する。次のAかBのどちらがあなたに取っては好ましいだろうか。

上司A:「それはかわいそうに。それでは私がクライアントのところに行って解決するよ。まかせておきなさい」

上司B:「そうか。そもそも。問題を起こしたのは君だよな。君自身がクライアントにしっかりと謝って来なさい」

 

【本当に守っているのか】

クライアントからの文句はよくあることだ。文句というと多少語弊があるが、クライアントからの問題点の指摘は当然のことである。営業担当者としてはそれを、一義的に受け止めなければならないだろう。

組織であるから、問題が起きた場合は上司に状況報告をする。そして上司の判断を仰ぐ。これが一般的なやり方だ。その場合、これまた一般的なのは先に記載した「上司A」パターンと「上司B」パターンであろう。

教育心理学における生徒の成長過程と先生の状態の一部が図に記されている。先生と生徒という関係において先生は生徒をどのように教育していくのかを表示しているのだ。これを企業勤務の上司(先生)と営業担当者(生徒)に分けて考えてみよう。

図の上側は保護的と記されている。上司Aがそれにあたる。上司Aは部下に対して保護的なので営業担当者としてありがたい上司だ。しかしながら、そこには上司の心理的な意向があることを忘れてはならない。

保護的の真下には二種類の□が左右に並んでいる。右側は過保護であり、左側は甘やかしとなっている。過保護の右下には支配と出ている。これって営業担当者からしたら恐ろしいことではないだろうか。問題解決に身を投じてくれる上司は、実は、部下を過保護扱いすることによって、部下を支配している可能性があるのだ。

上の左側は甘やかしである。甘やかしの左下には冷酷となっている。上司Aは営業担当者を甘やかしているのだが、そこには冷酷さがあるかもしれない。この場合の冷酷さは営業担当者を甘やかすことで、成長させずに、徐々に営業担当者の価値をそいでいくということなのだ。

 

【支配されない強さ】

図の下側は上司Bである。「自分でやれ」と放り投げているようだが、単なる放り投げではない。下側の左下には非保護とある。上司は保護しない。その場合、上司は右側の残酷として支配するか、左側の無視をして冷酷さを表示するかのどちらかだ。

なんだか、どこに目を向けても残念な結果になってしまうのだが、これが現実だと考えるべきではないだろうか。それでは、ここからどうやって抜け出すのか。

答えは単純だ。部下が自ら考えるということだ。上司はどういうパターンであろうとも部下を支配するか、支配できなければ冷酷に扱うのだ。この現実を認識することで、部下自身には緊張感が生まれ、独立意識が生まれるのだ。

ジョブ型が隆盛し、終身雇用が減る時代、会社員達の独立心や上司に対する耐性が話題となっている。この状況下、支配されない強さを認識する必要があるだろう。