ただいま混み合っておりまして

「お電話ありがとうございます。こちらは○○社・・PCの故障に関しましては1番、機能は2番、ネットワークは3番、その他については4番に。4番では担当者がお話させていただきます」。

「いや、故障かどうかもわからないんだけど。早く人間と話したいな」と思うことってありませんか。人間との会話が最初にあるべきで、4番目っておかしくないですか?

 

【IMの3段階】

ここまでにすでに数分かかっている。一刻も早く会話をしたいので4番を押す。案の定「ただいま大変混雑しております。お待ちいただくか、ホームページにお問い合わせください」とアナウンスが流れる。そして音楽が流れる。音楽を聞きたいわけではなく解決策を聞きたいのに!

そもそも、ホームページは見ているのだ。見てもわからないから電話しているのだ。あー、いらだつ!これをIM1段階と言う。

IM1段階とはImpatience第1段階のことだ。Impatienceは日本語だと“いらだち”となる。IM1とは「いらだち度1」だ。いらだち度には3段階がある。1はモヤモヤ感のいらだちだ。2は複雑だ。相手に対して文句を言いたくなるのだが相手とは電話がつながっていない。いらだちがひたすら積もる。そして電話を切るのだ。会話の意欲が積もったあげくの切断。これがIM2である。

IM3はもっと複雑だ。IM2の切断を復元するのである。電話を切ったはいいのだが、自分にとっての解決策を自分で失っただけだ。だからもう一度、電話をかける。

この段階でいらだちは最高潮となっている。そして、電話の主旨が変わっている。PCの故障を直すと言うよりは“いらだち”を解消することが主目的になる。つまり客は文句を言うのだ。

担当者はこういう。「お客様に待っていただいていることは申し訳なく思い、丁重にお話をするのですが、お客様からいきなり怒声を浴びせられるのが恐くて、電話に出るということが恐怖でもあります」。顧客がIM3状態にあるとはこういうことだ。

今、新型コロナ感染症の影響もありオンラインでのコミュニケーションに軸足が移り、電話での直接の会話は後回しになっている。

 

【音楽は不要】

企業側にしても、電話の対応人材の確保や人件費を考えると、ホームページ等でのやりとりが望ましいだろう。とはいえ電話による直接会話のニーズは残る。それに対応する人材は、顧客が抱えるIM1~3の問題に悩み、そして電話の対応者は減っていく。でも電話は必要だ。

ある会社は目先の対策として電話対応の方法を変えている。対応の順番を変えるのだ。何をしたいのかという1番、2番と言った質問を最初に持ってこず、まず、電話の会話につながるようにする。冒頭の4番を、1番に置き換えるのだ。「1番ですか?2番ですか?・・・直接つなぎますか?」という部分を「まずはつなぎますね。つなぎますから、つながるまでに次の質問に答えてみてください」という音楽無しのやり取りに変えるのだ。

客は問題解決のために電話をしている。そのためにはつながるまでに時間はかかる。しかし、その待ち時間が音楽では待ちづらい。いらだつ。

あくまでも電話で会話につながることが前提で、そのために待つ。待っている間に「もしかしたら1番、2番、3番の説明で解決できるかも知れない」という解決手段が提示される。音楽ではないのだ。

この方法は東南アジアの一部の国で取り入れられている。日本でもどうだろうか。